オレンジペコという紅茶の話
こんにちは、ミテキです。
紅茶をそこそこ飲む方であれば、「オレンジペコ」という言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。
商品にオレンジペコ、あるいは省略してOPと書いてあったりしますが、オレンジペコが何か説明できる方は少数派かもしれません。
この記事ではオレンジペコとは何か?を解説していくのですが、最初に答え合わせをしてしまうと、
オレンジペコとは、味や商品名ではなく紅茶の「等級」の一種です。
これだけだとざっくりすぎるので、このあともう少し詳しく見ていきますね。
今回は、
- オレンジペコがどんなものか知りたい
- 等級について簡単に知りたい
- オレンジペコの由来も気になる
という方に向けて、オレンジペコのご紹介と、簡単にですが紅茶の等級についても説明します。
オレンジペコによくある誤解2つ。そもそもオレンジペコって何?
紅茶専門店の方の話を聞いてみたところ、オレンジペコにありがちな誤解としては
- 果物のオレンジの香料などを使っている、あるいはオレンジの味がする
- 「オレンジペコ」という品種・味・地名の紅茶がある
の2つが挙げられるようです。
まずいきなりですが、「オレンジペコ」は「オレンジの味・香り」と関係ありません!
ややこしいですよね。ミテキ自身、紅茶の勉強を始めるまで「オレンジに関係する葉や香料を使っているのかな?」と思っていました。
でもよく考えてみれば、オレンジペコという名前でもオレンジの味がするわけじゃないですよね(もちろん、香料などで風味をつけることはできます!)。
これはかなり誤解されやすい名前だと思います……。
オレンジペコという味の紅茶はない。紅茶を頼むときはご注意を!
また、冒頭で説明したように、オレンジペコという産地や味(商品名)の紅茶というわけでもありません。
アッサム、ダージリンなどの紅茶とはまったく違うものなんです。
繰り返しになりますが、オレンジペコは紅茶のサイズなどを表す等級(グレード)の一種。味を表すものではありません。
簡単に言えば、紅茶専門店で種類を言わずに「オレンジペコください」と注文するのは、「Mサイズください」とだけ注文しているようなもの。
店員さんは、お客さんが「どの紅茶の」オレンジペコを注文したいのかわからないのです。
ここで、もしかすると、
でも、「オレンジペコ」って名前の紅茶が売っているのを見たことあるよ!
という、よく紅茶を飲まれている方からのツッコミも入るかもしれません。
まさにそのとおりで、商品名が「オレンジペコ」となっていることも多いんです。
そのために、「オレンジペコという味や産地がある」という勘違いが生まれやすいのだと思います。
実は「オレンジペコ」という商品名で紅茶が売られている場合には、
- 「〇〇味(産地、ブレンド)」の
- 「オレンジペコ」という規格を
- まとめて売っているよ
という意味なんです。
「セイロン オレンジペコ」など、紅茶の産地と一緒に呼ばれていることも多いです。
オリジナルブレンドとしてブレンド名を省略し、オレンジペコとだけ書いてある場合もあります。
たとえば地名やブレンドが書いていなくても、商品説明には「セイロン茶をブレンド」のように書かれていることがあります。セイロン(スリランカ)を中心としたブレンドの、オレンジペコだけを集めたということですね。
飲み方のおすすめ情報が載っていることも多いので、ぜひ商品説明もチェックしてみてくださいね!
オレンジペコと紅茶の等級(グレード)の話
地味にややこしい、紅茶の等級(グレード)という概念
オレンジペコが等級であることがわかったところで、この等級、あるいはグレードとも呼ばれる単語についてもう少し詳しく説明します。
一般的な「等級」という言葉は、大辞林によれば、
上下の位。優劣の段階。階級。
松村明編『大辞林』(第3版)2006年、三省堂
とあります。確かに、等級には優劣が含まれているイメージがありますね。
しかし、紅茶における等級は、一般的な用法とはまったく異なる用語です。
先ほどもさらっと触れたのですが、実は紅茶における等級とは原料となる茶葉の大きさと形状を表すもので、紅茶の美味しさ、品質を表すものではありません。
紅茶の茶葉が作られる工程のなかで、必然的に生まれるものなのです。
そもそも「茶葉が大きいから質が良い」、「小さいから質が悪い」ということはありません。
では、その工程を紹介していきます!
紅茶を美味しく飲めるようにサイズがそろえられる
そもそも茶葉は葉っぱの状態から整えられ、その過程でさまざまなサイズ・形状になっていきます。
茶葉のサイズの違いは、紅茶抽出の速度の違いとして表れます。
普通は小さい茶葉のほうが速く味が出てきます!
それが全部まとめて販売されていると、紅茶を淹れたときの風味や色にバラつきが出てしまいます。
そのため、販売されるまでにそれぞれのサイズや形状に分けられるんです。
このときにそろえられたサイズ・形状のことを等級と言います。
ちなみに等級区分はおおむね同じようなものが採用されているものの、世界中で完全に同じ基準があるわけではありません。生産者やブランドによって呼び名が変わることもあります。
インド紅茶では、「ファイン・ティッピー・ゴールデン・フラワリー・オレンジペコ・ワン」(FTGFOP1)なんていう長い等級名も!
等級=飲みやすいようサイズ・形状ごとにまとめた分類のこと
等級の中でのオレンジペコの分類は?
じゃあ、等級のなかでオレンジペコとは、ざっくりどんな立ち位置なのでしょうか。
紅茶検定の教科書である「紅茶の大事典」、愛読書「美味しい紅茶の図鑑」でオレンジペコについての説明を見てみると、
針金状の長い葉で大型のリーフ。
紅茶の大事典
茶葉の長さが7〜11mmの針金状のもので、葉は薄い。
新版 美味しい紅茶の図鑑
となっています。
そのほか、生産国などで規定されているオレンジペコの定義も含めたポイントをまとめると……
- 茶葉の中では大きめのリーフタイプ
- 水色(すいしょく。紅茶の抽出液の色)は薄いオレンジ色
- 細長くねじれている、針金状
以上の条件を満たすような茶葉が、「オレンジペコ」であるといえます!
どうしてオレンジペコと呼ばれているの?起源はどこ?
これまでオレンジペコとその等級区分について見てきましたが、最後にちょこっと余談を。
そもそもなんでオレンジペコって名前になったの?
そう、なぜ果物のオレンジには関係がないのに、オレンジペコなんていう名前になったんでしょうか?
オレンジペコの由来は中国の「白茶」から
そのはじまりは、お茶の起源・中国。今でも福建省で作られている「白茶」からだと言われています。
白茶に用いられていた、白い産毛がたくさんついた茶葉を白毫(パイハウ)と言い、これを福建語で発音した「ペーコー」がヨーロッパに伝わりました。
なかでも茶文化が大流行したイギリスでは、王室を中心に大人気となったようです。
そして、オレンジペコ自体の誕生は19世紀のインド・セイロン。
この紅茶は「産毛がオレンジ色をしている」ため、産毛が白いペーコーに対して「オレンジペコ」と呼ばれるようになりました。
ちなみにこの白茶、強発酵茶である紅茶とは異なり、発酵を途中で止めた弱発酵茶という分類。
ミテキも本場で飲んだことはまだないのですが、白いというよりはうすーく透き通ったような黄色という感じで、とても上品で甘みのあるお茶です。
日本では少し珍しいですが、機会があればぜひ試してみてください!
等級を理解して紅茶をもっと美味しく!
今回はオレンジペコと等級の説明や、オレンジペコの由来についてをご紹介しました。
この記事では簡単に説明しただけですが、等級、つまり茶葉の大きさ・形は紅茶の抽出時間などを大きく左右するポイントです。
使う茶葉がどの等級に属しているのか、どのくらい蒸らせばいいのか?をちょっと考えてみると、紅茶をさらに美味しく楽しめると思います!
<参考文献>
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「オレンジペコ」という味の紅茶があるわけではないんです。